2010年 04月 03日
愛犬カメラマンのための気まぐれ講座 3 |
デジタル一眼レフを手にしてしばらくすると、いいレンズが欲しくなる。自分の腕は棚に上げてレンズが良くなれば撮れる写真も良くなるのではと勘違いするのだ。
ああ、わたしも勘違いしたクチだ。
いったい、どれだけのレンズを買っただろう。トータルで100万円近い金額をレンズに投資した。
しかし、今のわたしは7Dと一緒に買ったEF-S 15-85mm F3.5-5.6 ISという金額でも性能でも中程度のズームレンズで9割方の写真を撮っている。これ一本でわたしの撮りたい写真のほとんどが撮れるからだ。他に使うのはEF-S 10-22mmとEF 70-200 F4 IS Lという2本のズームレンズ。この3本があれば、ほとんどの場合事足りる。
他のレンズは保管庫で埃を被っているか、貧乏でぴーぴー言いながらがむしゃらに突っ走っている友人のフォトグラファーに貸している。
先日、犬写真の撮り方を教えると謡うサイトを斜め読みした。「単焦点レンズを使おう」という見出しのもと、単焦点レンズ(焦点距離が変わらないレンズ)がズームレンズに比べどれだけ描写力が優れているか、ボケ味がどれだけ素晴らしいかを言葉を尽くして解説していた。
愛犬の可愛い、美しい、素敵なポートレイトを撮りたいという人に向けた記事なのだ。
自分の過去には目をつぶって笑ってしまった。
確かに単焦点レンズの描写力、ボケ味はズームレンズをはるかに凌駕する。しかし、その描写力を必要とするのはいったいだれなのか? デジタル一眼レフを手にしたばかりの人間にはその描写力は必要ないし、ある程度カメラの写真のなんたるかを理解してきたアマチュアなら、レンズの描写力と写真の本質にはあまり関係のないことが理解できるようになっているだろう。
あの描写力を必要とするのはプロと一部のハイアマチュアだけなのだ。
確かに単焦点レンズを使えばポートレイトは美しく撮れる。しかし、それは腕が伴ってこその話だし、果たして、愛犬カメラマンはただ延々とポートレイトだけを撮り続けるのだろうか? どれだけ愛する犬であっても、毎日毎日ポートレイトばかりを撮っていたならどんな人間だって飽きる。他の写真も撮ってみたくなる。それが人情だ。
では、描写の素晴らしい単焦点レンズをカメラに装着して外へ出てみよう。楽しく遊ぶ愛犬を撮影しよう。
しかし、単焦点レンズは焦点距離を変えることができない。望む構図を手に入れるためには、カメラマン自らが足を使って動き回らなければならない。さらに、単焦点レンズのボケ味を使いたいと思えば、被写界深度が浅いという事実、つまりピント合わせがとてもシビアになるという事実に立ち向かわなければならなくなる。
動き回る愛犬に極薄のピントポイント。できあがるのは無残なピンぼけ写真ばかりだ。
どうしてカメラメーカーやレンズメーカーは本当のことを言わないのだろう。今のズームレンズはいいレンズですよ、単焦点にはかなわなくても、ちゃんと素直ないい描写をするように作っているんです、と。
カメラ本体と一緒に買うことのできるキットレンズで充分なのだ。単焦点はもちろん、F2.8通しの明るいレンズも必要ではない。ひたすらキットレンズで写真を撮り続けていれば必ず上達する。単焦点や明るいレンズに比べ不自由なために自分の頭で考え不利を克服しようとする分、間違いなく上達は早くなるのだ。
そうやってある程度の腕前になったときに初めて、単焦点レンズを買えばいい。単焦点レンズの性能を上手に使いこなさせるようになっているはずだ。
遠回りしてきたわたしが言うのだ。絶対に間違いはない。
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by walterb
| 2010-04-03 11:25
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